サッカーの見方というのは、人それぞれが持っていると思います。それ故、サッカーの楽しみ方は千差万別。
このブログを読んで頂いている方であれば知っている方も多いと思いますが、僕は選手目線で見ることが多いです。優れた戦術と言えど、それを構成するのは選手ですし、システム論的な所で言うと、1か所で1vs1を破られると連動して全てがズレていく必要が出てくる。そういう意味で、
1vs1を制すること
というのは、サッカーにおいてとても重要な要素だと考えています。
今回、その辺について取り上げてみます。僕なりのサッカーの見方という所ですね。興味があれば、参考にしてみてください。
※本記事は、少し物議を醸してしまった『ポジショナルプレー説明』記事のリライト版になります。ポジショナルプレーではなく僕視点のサッカーの見方・・と捉えてください。
サッカーにおける基本的な攻守の考え方
この記事の前提条件として、サッカーにおける基本的な攻守の考え方についてをここで書いていきます。
まずは、守備から説明していきます。ただ、先に書いておきます。これらは本当にありふれたもので、特に目新しい物でもありません。念のための確認といった所です。
サッカーにおける守備の原則
まず、守備側を考えます。サッカーにおける基本的な守備の原則は以下2つ、
シュートを打たせない事
そして、
ゴールとボールの間に体を入れる事
という事が言えます。
ディフェンスをするのに前者『シュートを打たせない事』は当たり前の原則だと思います(実は、局面によってはシュートを打たせた方が良い場面も『例外』的にあると思っているので、『原則』と表現しています)。
後者『ゴールとボールの間に体を入れる事』は、サッカー経験者、特にDF経験者であれば、よく知っている原則ですよね。
この形ですね。ここでのゴールは、『ゴール中央』としましょうか。ゴール中央とボールの間という事にします。
サッカー未経験の方に対してこの理屈を説明すると、誰しも1度はやっとこと(やったことがなくても見聞きはしたこと)はあるであろう『ブロック崩しゲーム』を想像してもらえれば、分かり易いかな?と思います。
ルールは、簡単にイメージできるゲームですよね。ボールをブロックにぶつけて跳ね返ってくるのに対して、下の板みたいなのを操作してボールを跳ね返すゲームです。ボールを下に落とさずに跳ね返し続けて、ブロックを壊していくゲームですね。
このゲームを行うことをイメージしてみてください。自分がプレーヤーだった場合、どんなところに気を付けますでしょうか?
恐らくですが、ほとんどの人は心理として、
『落ちてくるボールに対して、出来るだけ「板の正面」でボールを跳ね返したい』
と思うと思います。正面に当てることを意識していれば、少しズレたとしても板のどこかしらには当たるのではないか?と考えますよね。
サッカーに話を戻します。実は、ブロック崩しゲームにおけるこの心理はそのまま、
サッカーにおける守備者の心理
になります。つまり、向かってくるボール(相手のドリブル・シュート)に対して、自分の体の正面で弾きたいという心理。
ブロック崩しと同様、サッカーもこれが完璧にできれば理論上は失点することはないのです。ただ、ブロック崩しでも操作ミスがありますし、サッカー選手もミスをしますよね。
加えて人間の体は、このブロック崩しのように板状ではありません。それ故に、例え選手にミスが無くても人間の体の構造上、完璧に体の正面でボールを弾き続けることは不可能という事になります。つまり、失点する可能性を0%に抑えることはできないのです(だから、サッカーは面白いw)。
ただ、『出来るだけ体の正面でボールを弾いていれば、失点も少なくなる』という事は確率論的に言えますよね。だから、サッカー選手は基本的にこの考え方をベースに守備を行います。改めて書きますが、サッカーの守備の基本は、
ゴールとボールの間に体を入れる事
という事になります。
ここで、注釈があります。以降、このブログ記事内では、ゴール中央とボールを結んだ線の事を、
防御線
と表記させて頂きます。
この図の通りですね。以降の文中に『防御線』とあれば、これの事だとご認識ください。
ちなみにこの防御線は、あくまでこの記事内の説明を簡潔にするために僕が勝手につけた名前で、サッカー用語でも何でもありません。故に、ご自身でどなたかにサッカーを語る上で『防御線が・・・』などと、したり顔で話すことは避けてください(笑)僕に対してのコメントであれば、OKですw
ここで、守備の原則を防御線で言い表すと、
守備の原則: 防御線に守備者自身の体を入れる事
という事になります。
続いて、攻撃側の基本に移ります。
サッカーにおける攻撃側の原則
守備側を書いてしまうと、攻撃側の原則は非常に簡単です。守備の反対を言えば良いだけです。つまり、
ボールを動かして防御線から守備者の体を外すこと
そして、
シュートを打つこと
という事になります。
図示するとこんな感じですよね。防御線から守備者の体を外せば、シュートも打てますよね。
一旦、ここまで紹介したサッカーの攻守の原則をまとめますね。
防御線を巡る攻防
ここまでに説明した、サッカーにおける守備側と攻撃側の原則を整理します。
守備側: 防御線に体を入れる事
攻撃側: ボールを動かし、防御線から守備者の体を外す事
たったこれだけです。(ここでは、シュートを打つ/打たせないは省略してます。)
サッカーの試合を見てると、プレーヤーは無意識にこの防御線に基づいたプレーをしているのが分かります。また、そこで繰り広げられる駆け引きも、この防御線を中心に行われています。
例えば、ドリブルを仕掛けてくる相手が左利きの選手だった場合、『相手の左足を切るような守り方をして窮屈にさせる』という守備者の対応を見た事があると思います。その対応も、守備者は防御線にすぐに戻れる立ち位置を保ちながら行っています。
つまり、防御線の攻防は、駆け引きという側面でも重要な要素だという事が言えると思います。
そして・・・
実は、僕自身がサッカー観戦の一番注目しているのが、
この防御線を巡る攻防
という所です。長くサッカーを見続けていますが、その攻防から次の展開が生まれていると感じているからです。
サッカーには色んなシチュエーションがあるので全部を説明することは出来ませんが、今回は以下の3例を説明します。
- 1vs1
- 2vs2
- 11人の場合
今回は攻撃側からの視点で解説します。
1vs1
1vs1は簡単ですよね。
防御線から守備者を外した所でボールをコントロールしてやれば良いだけです。上で紹介した攻撃側の原則とまるで同じです。
防御線から外された守備者は困りますよね。シュートも打たれてしまいます。
ここは、まず問題ないですよね。では、次に2vs2に行きます。
2vs2
ここでは、少し問題形式としてみます。ちょっと、考えてみてください。
あなたは、攻撃側⑩です。
味方選手⑨がPAすぐ外の右45度の所からボールを保持、相手②に攻撃を仕掛けようとしています。守備側は、相手②以外には相手③がいます。相手③は、相手②のカバーリングできるポジショニングをしています。
この時、あなた⑩は味方⑨のフォローとしてどこに立ちますか?次の(A)、(B)、(C)の内で、防御線の攻防で有利に立てる場所を考えてみてください。
どうでしょう?ピンときましたか?
それでは、1つ1つ見て行きましょう。
まず、(A)の立ち位置。これは論外ですよね。パスがあなた⑩に通ったとして、相手③はあなた⑩の防御線に立つことはできませんが、もう1つの攻撃側の原則の『シュートを打つ』が次のプレーで選択できません。
次の展開を考えた場合、相手③はあなた⑩のポジショニングを無視して、相手②のカバーリングに集中できます。ってか、ゴール前で2vs2になってるのに、わざわざPA外のサイドでボールを受けようとするのは明らかに違いますよね(苦笑)
では、次に味方⑨に一番近い(C)の立ち位置を考えます。ゴール正面ですね。
この立ち位置であなた⑩がボールを受けた際、今度は相手③があなた⑩にチャレンジしてきます(相手②がそのカバーに入ります)。相手③の移動は短く、直ぐにあなた⑩が持ったボールの防御線に入れてしまいます。
これだと、あなた⑩は相手③を防御線から外しているとは言えません。すなわち、あなた⑩の(C)というポジショニングで、相手③または相手②は困ったとは言えないかも知れません。
最後に(B)の立ち位置。この位置で、あなた⑩がボールを受けた場合を考えます。
この位置であなた⑩がボールを受けると、相手③のチャレンジが間に合わず、あなた⑩は相手③の防御線からボールを外した状態でシュートを打てる可能性はありますよね。
また、相手③があなた⑩の防御線に入れない事を嫌い、いつでもそこに入れるようなポジション取りをした場合を考えます。そうなると、相手③はあなたの防御線には入れますが、今度は相手②のカバーが間に合わなくなる可能性が出てきます。
もし、味方⑨が相手②をドリブルで抜いた場合、相手③のカバーリングが間に合わず、相手②を防御線から外すことになるので、シュートを打つことができます。
という事で、あなた⑩が(B)のポジショニングを取ることで、『相手③はあなた⑩の防御線に入れない』あるいは『相手③に、相手②のカバーを出来なくする』と言うポジションを取ったことになります。このように、2vs2の状況においても、
防御線の攻防は重要
ということは理解して頂けるのではないかな?と思います。
最後に、11人の場合を考えてみます。
11人の場合
ここでも、問題形式とします。
あなたは⑩です。こちらが攻めている際、相手がノーマルな442のブロックを組んでいたと想定します。ある瞬間、ボールを持つ味方⑧とあなた⑩の間のパスコースが完全に空きました。
この時、あなた⑩は(D)と(E)のどちらの立ち位置でボールを受けますでしょうか? 次の(D)、(E)の内で、防御線の攻防で有利に立てる場所を考えてみてください。
もう、ここまで来ると何となく分かりますよね?相手④を防御線から外しているのは(E)ですよね。
ここで、この(E)であなた⑩がボールを受けた後の次の展開を考えてみます。
あなた⑩が(E)でボールを受けた場合、上図のように相手④は防御線から外れた立ち位置になっています。
こうなると、相手④からするとあなた⑩にシュートを打たれる可能性が出てきます。ですので当然、相手④は防御線に入る動きをします。
こうなると、何かお気づきの点が出てこないでしょうか?
防御線に入るために相手④は、下がる動きになってますよね。DFラインのCB1枚が下がってしまい、DFラインにギャップが生まれます。
こうなると、その動いた相手④に連動して、他のDFラインの選手も下げる動きをしますよね。次の展開で、相手④が下がったことで生まれたギャップを使われる危険が出てきた為です。そこを消す動きになるのは当然です。
あなた⑩は、(E)というポジション取りでボールを受けることで、
相手DFラインを下げさせた
という事がはっきりと言えると思います。
そして、更に・・・・・・
DFラインが下がったことで、MFーDF間にスペースが生まれるのですね。また、次の展開でそこを使われる危険が出てきます。
そうなると、DFラインが下がったことに連動して、MFラインも下がらざるを得ないのですね。
こうやって、あなた⑩が相手④との防御線の攻防を制してボールを受けたことで、
相手のシステム全体を動かしたことになる
のですね。
これら、全てのきっかけは、1か所で防御線の攻防を制したところから始まっています。
※『2vs2』と『11人の場合』について、この記事の最後の最後に補足を入れてます。そちらも良ければ参照ください。
この辺りに優れた選手を1人、紹介してみます。昨年、セレッソで引退しました大久保嘉人です。
嘉人の防御線の攻防
嘉人を評する際に出てきそうなワードで、
野性味あふれるストライカー
というのはあると思います。恐らく、8-9割は間違っていないでしょう(笑)
こう書いてしまうと、動物的な勘でサッカーをやってきていたような印象を受けますが、嘉人こそこの防御線の攻防を制し続けてた選手は居ないと考えます。
というのも・・・実は、上で紹介した例の最後『11人の場合』は、
嘉人の実際のポジショニングをそのまま書いたもの
です。以下の記事でも、少しだけ紹介した内容になります。
この試合は、試合後に嘉人の引退セレモニーもあった注目の1戦でしたので、記憶されている方も多いと思います。このレビューの嘉人の所を、防御線の攻防』目線で、再度、書き直してみたいと思います。
上の記事の文章を引用すると、
嘉人にゴールを獲らせる為、ボールを早めに前線に送っていた。
嘉人にボールを集め、ホーム最終戦で何とか嘉人にゴールを決めさせようとしてた試合です。
嘉人はオフザボールの動きで、ボールを受ければ相手が防御線から外れているポジショニングを常にしていました。そして、この試合はそこにボールが集まる。相手が防御線から外れてる所でボールを受けているので、嘉人はシュートを打てる状態に持ち込めていました。
引退セレモニーで自身も言うていた通り豪快に外しまくりでしたが(苦笑)、それでも嘉人は良い形で何本もシュートを打ててましたよね。そうなると、相手CBも嘉人に対する防御線に入るために下がるんです。(以下、上の記事の画像を引用します。)
相手CBを下げると周囲にギャップが出来て、セレッソが使えるスペースが生まれます。ここを上手く利用できた試合展開でもありました。
嘉人が良い立ち位置でボールを受けることで、相手:名古屋の選手の多くを困らせているのがはっきりと分かりますよね。
嘉人の防御線の攻防を制して相手を混乱に陥れていた
と言えると思います。
こういうプレーは個人的に大好きで、本当によく注目しています。そして、長く活躍する選手は、かならずこの攻防の駆け引きが上手い。特に長く活躍したFWにおいては、ずっとこういった防御線を巡る攻防・駆け引きを相手CBに対して続けていたのですね。
特に嘉人と同じく小柄なFWで活躍した選手は、強く感じます。嘉人以外でも、寿人や大黒とか。それこそ、モリシなんかも。
彼らは小さい身体を逆手にとって、相手の視界から消えたりしながら防御線を巡る攻防を制する。それを繰り返すことで、相手DFラインに釘を打ち、強いては相手のシステムを止めていた。そうやって、自チームに貢献していた訳です。
パスの出し手も
この防御線を巡る攻防で、優れていた嘉人が居て、昨年のセレッソが苦戦した理由・・・それは、
嘉人が防御線を巡る攻防を制しているのを周囲の選手が見えていなかった
という事は言えるかな?と思います。
この考え方で1つ言えることは、
防御線を制した選手がパスを受けた時
が効力を発揮します(あるいは、パスを受けられる・・・と相手に思わせる状態になること)。セレッソが苦戦していた時期、嘉人に良い形でボールを集められてなかったですよね。
上で挙げた名古屋戦は、前述の通り、嘉人にゴールを取らせようと嘉人にボールを集めていました。故に、上手くハマって相手のシステムを動かせていたのだと考えています。
そういう意味で、この考え方は『パスの供給側の能力も問われる』ということにはなると思います。つまり、
防御線を制している選手を見つける能力
そこにパスを通す能力
こういった所がパス供給側も問われるのではないかな?と感じています。
防御線を巡る攻防にも注目してみてください。
そんな所でここまでお読み頂いた方で、この記事に共感して頂ける方が居られれば、今シーズンは
防御線を巡る攻防にも注目
してみてください。僕の経験(観戦メインですがw)上、サッカーはその攻防の優劣から次の展開が生まれます。
そこに注目すれば、新たな発見ができるかも知れません。読んで頂いた方に新しい発見があれば、個人的に嬉しく思います。
補足:
3例の内、問題にした2例については、実は、
正解とは言ってない
です。あくまで、防御線を巡る攻防の有利不利に沿えば、2vs2:(B)のポジショニング、11人の場合:(E)のポジショニングだというだけです。引っ掛け問題のようになって恐縮ですが(苦笑)
2vs2の時の(C)の立ち位置でも、その考え方からは外れると思いますが、(B)よりシュートコースを広くとれる効果はありますよね。相手に防御線に立たれたとしても、そこでシュートを決められる技量があれば、(C)の立ち位置でも何ら問題はないと考えます。
それこそ嘉人のようなFWであれば、守備者がわずかに防御線に立ててない状況が生まれればシュートが打てる。であれば、(C)でもOKなんだと。
また、11人の場合に(D)でポジショニングした場合も、(E)より距離が近い分、パスは届かせ易いですよね。
また、(D)に立っていたのが、乾だったらどうでしょう?前向いて、相手④にドリブルを仕掛けることが出来ます。相手④も乾の間合いでドリブルされるのは嫌うので、距離を詰めてきますよね。そうなると、相手④の裏が空きます。そこを他の誰かが狙えるか?
乾が(D)でボールを受けることで相手④の動きを予測し、その裏を狙える選手がいるか?と言うのも、また選手の質の部分にはなってきます。相手④の癖みたいなものも、スカウティングで拾い上げてあげれば、選手の判断材料にもなりますかね。
このように、誰がボールを受けるのか?と言うのも重要になってくると思います。その選手の能力次第では、この2例のように、単純な立ち位置だけの考え方に沿わなくても良い場合もあると思います。
そういう意味で、サッカーには正解がないと思っています。
選手が『最良の選択を自ら出来る事が大事』ですね。
誰がどこでボールを持てば、相手はどう動くか?その相手の動きから、自分はどう動くべきか?
そういった事を考え実行できる選手をみたいと思ってます。
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