2023 セレッソ

【セレッソ】鹿島戦:ロングボールに対するFWとCBの競り合いの優劣

セレッソ 0-1 鹿島

2023.5.7@ヨドコウ桜スタジアム

敗戦。何か訳の分からないままに、敗戦と言う感じでしたか(苦笑)

不思議な感覚ですが、負けは負け。

一応、振り返ります。

試合内容・雑感

●サッカーにならなかった

試合後の

見ての通りで、サッカーにならなかった。セットプレーでやり合うしかなかったので結果、それで負けたということ

https://www.nikkansports.com/soccer/news/202305070001020.html

真司のコメントが全てという感じです。多少の優劣はありましたが、基本、ボールが行ったり来たりするだけで、内容らしい内容はなかったような感じで。

なので、

内容を語るにも何を語れば・・・

という何ともレビュー泣かせな試合です(苦笑)

ここまでで、何を書こうか?悩みながら書いてます(苦笑)まあ、赴くままにキーボードを叩いてみます。

●ピッチコンディションが悪い→フィジカルサッカー

実は試合前から、

この試合は、分が悪そうやな・・・

というのは思っていました。

豪雨による極端なピッチコンディションの悪化、つまりは、足元が悪い状態。足元が悪いと、無意識にでも滑ることを考慮し、踏ん張りが甘くなる。踏ん張りが甘いと、『高く飛ぶ』『強く当たる』という所が弱くなってしまう。

こうなると、選手自身の単純な『身長の高さ』『体重の重さ』という勝負が色濃く出る感じですね。要は、フィジカル勝負になる。このブログで書き飽きる位に書いてますが、今のセレッソの選手はフィジカル勝負には分が悪いところがありますよね。

そんな感じで、『分が悪そう』というようなところでした。

●セレッソの狙いとメイン側の水溜りの考え方

セレッソの狙いは、このピッチコンディションでも、あくまで

繋げられる時は繋ぐこと

だったようです。色んな条件を考慮すると、これも理解できるなと思いました。

ピッチコンディションの影響より、両チームと前線へのロングボールを多用してました。つまり、FW 対 CB の空中戦が多くあったということです。ただ、理由はメインのお題で後述しますが、ロングボールに対するFWとCBの競り合いは、

CBが基本的には有利になる

なんですね。

この試合通してもご理解頂けると思いますが、セレッソにはレオセアラ、鹿島には鈴木優磨、垣田と空中戦に強い選手をFWに抱えてました。それにも関わらず、互いのロングボールに対して、鹿島CB:上田・関川、セレッソCB:ヨニッチ・鳥海が競り勝って、ボールを弾き返せてたと思います。

セレッソとして、FWへのロングボールが効かなければ次の手へ。で、

原川・真司・奥埜のトライアングルで繋いでボールを前に運ぶ狙いに切り替えた

のかと。ピッチコンディション的に言えばリスキーともとれる手段ですが、ロングボールが効果を生まないのであれば、強みである技術を活かそうとしたい・・・という所だったと思います。

繋ぐ目的で試合を進めるのに厄介だったのが、メインスタンド側の広範囲に広がっていた水溜り。前半は、完全にセレッソはそのエリアを避けてました。DAZNの前半のスタッツで、左サイド(バックスタンド側)からの攻撃:75%に対して、水溜りのある右サイド(メインスタンド側):15%と顕著に表れてました。

ボールを繋ぐが、水溜りは避ける。そんな感じでしたかね。

ただ、原川・真司・奥埜、流石の技術でしたよね。特に真司は、あの足元の悪い中で相手を背負ってもボールキープしていたので、頭1つ抜けた技術を持ってるなと感じさせられました。ここは、見る価値があったところかな?と。

●鹿島の狙い:後半の水溜りを起点とする。

鹿島はセレッソと比べてフィジカル的な所で、基本的には優勢な所だったかと思います。ただ、最後のヨニッチ・鳥海の壁を越えられない・・・みたいな所。故に、前半は拮抗した試合展開だったかと。

後半の鹿島、セレッソが避けた水溜りを使いまくってましたよね。ここが、効いてました。前半は、鹿島も水溜りをそこまで活用してなかったと思うのですね。後半になって、積極的に使い始めた印象で。

これ、恐らく、

  • 前半:水溜まりが自陣にある
  • 後半:水溜まりが敵陣にある

とういところの差だと思いました。

水溜りではボールが止まる。ここは、選手からすると『ボールを転がすには不安要素の強いエリア』という認識だと思います。何が起こるかわからない・・・という感じで。鹿島が前半にそこまで積極的に使わなかったのは、前半が自陣に水溜りがある状態だった為かと思います。言い換えると、

守る時に、不案要素を出したくない。

という所。逆に言えば、後半は、

守る側に不案要素は、攻撃時の狙い所。

というところだったのかな?と。それが、前半と後半に生まれる状況であったから、そういうボールの置き方をしたのかな?と。

水溜りは、ハーフウェイラインより少しアウェイ側寄りにあったのですね。前後半で、それが自陣になるか?敵陣になるか?それによって、そこを使うか?使わないか?その細かい判断が秀逸だったなと思います。

以前のブログで紹介しましたが、

セレッソ初代監督:エミリオさんの

攻撃か?守備か?はボールの位置が決める

という考え方。

敵陣に水溜りがある後半に、そこを利用したのが鹿島だった

という所だったと思います。

特に失点後の試合終盤の鹿島の水溜り利用は、凄かったですよね。ボールを水溜まりで止められて、そこで人で密集を作られると、なかなかボールを外に出せなかったですもんね(苦笑)ある種、『鹿島る』の水溜りバージョンみたいな効果は感じました。

流石、鹿島。『したたか』だったと思います。

●失点
セットプレーは仕方ない面はありますよね(苦笑)

ただ、アウトスイングでゾーンの外のボール。広島戦もほとんど止められなかったのを、この試合でもやられたのは・・・とは思います。スカッド的に難しいと思いますが、何とか対応を。

●上門の退場。

これも仕方ない・・・ですね。鹿島の選手が大事に至らなかったのが救いですし、上門にも切り替えて欲しいところ。

選手の腰くらいの高さのボールは、足でボールを蹴りにいく選手とヘディングに行く選手と2パターンに分かれると思います。なので、こういうボールに対して、頭と足が鉢合わせる可能性はあります。

ピッチコンディションが良くてボールが転がすことができれば、浮き球のパスは少ないのですが、この試合のようにピッチコンディションが悪いとその頻度はどうしても急増しますよね。故に、危険なプレーにつながる可能性も高まるのかと。

少し余談ですが、古い話、2009年の鹿島vs川崎戦で後半30分くらいで大雨による試合中断、そのまま中止になった試合があります。試合開始後に、雷で中止になることはあっても大雨で中止になるは、この試合が初めてだったと記憶してます。また、川崎が2点リードをしていたのもあり、再試合をどういう形にするのか?で注目を浴びた試合でした(後日、点数そのままで、その後半30分から続けると言う形での再試合)。

その試合の主審:岡田正義さんが、

ピッチコンディションの急激な悪化から、浮き球のパスが多くなってきていた。選手の頭を蹴られるリスクを考慮し、中断・中止を決めた。

と言う趣旨の記事を読んだ記憶があります。中止判断になった際、2点リードしてた川崎の選手が(中止によってそのリードが無効になることを危惧して)猛抗議してたのですが、この上門退場のシーンを見て、あの時の岡田さんは正しい判断したんだなと今更ながらに感じました。

負け惜しみではなく、雨の日のピッチコンディションの悪い試合は選手を守るという視点で考え物だなとも思います。中止するには、その判断材料が難しいですけどね。


10人になっても、クルークスのクロスから颯太とか、奥埜の諦めないプレスとか。上門をフォローすべく戦ってくれたと思います。そこは、誇ってよいか?と思います。

負けは負け。でも、度外視中の度外視という試合でもあるかな?と思います。上門の精神的ダメージは心配ですが、チームとして割り切ってほしいなと思います。


そんな所で、本題へ。ロングボールに対するFWとCBの競り合いについて。

上でも書きましたが、ロングボールに対するFWとCBの競り合いは、基本的に、

CBが基本的には有利になる

という所の紹介を。

ロングボールに対するFWの動きとCBの守備

この試合、前述の通り、ヨニッチはロングボールに全勝したのではないか?と思う位に弾き返してくれました。逆に言えば、鹿島CBにレオセアラは完封されてたと思います。

レオセアラはご存じの通り、強さが売りな所はありますよね。それでも、この試合は全くと言っていい程、前線で勝てなかった。これも逆に、レオセアラを鹿島FW:鈴木優磨、垣田に置き換えてもそのままの事が言えます。

何故、こういう状況が生まれたか?を、以下の2段階に分けて解説してみたいと思います。

  • 高さ
  • 顔の向き

まずは、『高さ』から。

『高さ』から見たロングボールの競り合い

GKからのロングボールに対して、同程度の体格のFWとCBが競る場合を想定します。

また、落下地点に入るタイミングも同じとします。ただ、落下地点に入るタイミングが同じと言えど、同じところには立てないですよね。ここでは、FWがCBを背負うと想定します。

この状況で、例えばGKからのロングボールが入った場合、下図のような状況が生まれます。

ロングボールに対するFWとCBのジャンプする高さ比較

図のように、ボールの落ちてくる軌道に対してCBより、

FWの方が、高くジャンプする必要がある。

という状況になるんですね。オフサイドを取られないためにFWは、基本的にCBより前に立ちますよね。なので、どうしてもCBよりボールの高い所に立つ形になってしまうのです。俗に言う『被る』という状況が生まれ易い所ですよね。

ならば、FWが次に取る手段が

FWはCBを押し下げて、自分が低い位置のボールに競れるようにする

というようなところ。FWがCBを背負ってぐいぐい下がろうとするようなシーン、よく見かけますよね。

FWのCB押し下げ

上の図のようなにCBを押し下げて、

ロングボールに対して、自分がボールを先に触れる(高さの)ポジションを確保するのが目的

と言った所です。

この辺、30cmとかの領域ですが、その小さな差で勝敗が決したりするイメージではあります。だから、拮抗したCBとFWのポジショニングの戦いは凄いですよね。

ただ、それをFWがCBを押し下げようとしても、やはりCB優勢は動かないです。それが、次に説明する『顔の向き』です。

顔の向き

前述の通り、FWがCBを背負って、ぐいぐい押し下がろうとする動きを取ろうとするシチュエーションを想定します。ここでも、FW/CBは同体格でボールの落下地点に入るタイミングも同じとしますね。

この時、『顔の向き』そして『進行方向』に注目すると、

  • FW・・・進行方向:前、顔の向き:後
  • CB・・・進行方向:前、顔の向き:前

という形になります。

FWとCB:進行方向と顔の向きの違い

図示するとこんな感じ。

ボールが後ろから来る分、FWは進行方向(CBを押し下げたい方向)に対して顔の向きが後ろ、逆向きになるんですね。対して、CBは進行方向と顔の向きが同じ。体格差、落下地点に入るタイミングが同じであれば、顔が逆向きになる分だけ体勢不利と言えます。

極端に言えば、FWは後ろ向きで相撲を取らされる・・・みたいなところですかね。その状態だと、FWがCBを押し下げて良いポジションを取るのは難しいと思います。

加えて、CBは前を向いている分、FWの動きを視界にとらえることができる。だから、被せ気味にFWに乗っかってFWがジャンプするのを防いだりとか、そういったDFならではのテクニックで、FWの動きをコントロールできたりするのですね。

同じ考え方で、この試合のCKの失点時、最初に毎熊が競り負けたのがこの形ですね。毎熊はボール方向を見ながらステップバック、対して、競り勝ったアルトゥール・カイキは進行方向そのままに顔の向きも真っ直ぐ。普通に考えて、勢いは違ってきますよね。

このような形で、『高さ』『顔の向き』の両方で、ロングボールの競り合いは、

CBの方が有利

ということは言えると思います。

加えて、今回の試合はピッチコンディションが悪く、踏ん張りが効かない。FWにとっては、より条件が悪くなり、

  • 高く飛べない
  • 強く押せない

の2重苦もあったと思います。それ故、ロングボールの競り合いは、両チームのCBの完勝と言った流れになったのではないかな?と思います。

落下地点に入るスピードの勝負。セレッソの工夫。

CB有利と書いたので、念のため、誤解がないようにも書いておきます。CB完勝の裏側には、

ヨニッチ・鳥海、植田・関川のCBとしての能力も当然ある

と言うことは間違いなく言えます。

上記で説明した『高さ』『顔の向き』の所でCBが有利になる前提条件として、

(FWとCBの)ボールの落下地点に入るタイミングが同じだった場合

と、くどい位に書きました。FWの落下地点に入るのが早かった場合、FWがCBを抑え込んでクサビを受けることは可能です。この試合において、そう言ったシーンがなかったのは、

CBがFWより先にボールの落下地点に入っていた

というのは間違いなく言えると思います。この辺、素晴らしい出来だったと思います。

こういう試合は、ある意味、CBの見せ所でもありますもんね。そういう意味で、集中していた4人に拍手を送りたいですね(ヨニッチ、鳥海にはより強い拍手を(笑))

逆に言うと、このロングボールの競り合いは、

FWとCBの落下地点に入るスピードの勝負

とも言えると思います。

その辺で、セレッソに面白い工夫が見えていたので、その辺の紹介を。

それが、ジンヒョンによる、

速くて低いロングボールを前線に送ること

という所ですかね。

この速くて低いロングボールの意図は、

  • 速いボール: CBに落下地点に入る時間を与えない。
  • 低いボール: FWが高く飛ばなくてもボールに触れることが出来る。

というところだと思います。『低い』の利点は、以下のようなイメージですね。

低い軌道のボール:背の低いFWでも大丈夫

ロングキックをミスって低過ぎたりすると、途中で引っ掛けられるリスクもあります。が、そこはジンヒョン信用ですよね。

こういうボールを蹴ることができるのであれば、

FWの高さは関係なくなるかな?

と思って見てました。レオセアラ→颯太の交代に疑問を持たれてる方も多かったようにも思いますが、この低くて速いロングボールを蹴ることで、

高さ勝負ではなくて、落下地点に入るスピード勝負

という所になるので、理に適っている手段だなと思っておりました。

高さがあるに越したことはないですが、ロングボールを蹴るのはジンヒョンですし、2回目ですが、そこは信用ですよね(笑)

この戦略が上手くハマれば良かったのですが・・・この速くて低いロングボール、実は、

上門の退場にも繋がってしまった

んですよね・・・(苦笑)速くて低いロングボールがバウンドした所に、上門は足を上げてしまった形で。

色んな策は見て取れてましたが、結果論ですが、これが裏目に出たようにも感じました。不運な所ではありましたが。

雨のサッカーは『根幹部分』が出る。

そんな所で、見所少なめの試合を振り絞って書いてみました。それなりに纏まってますかね(笑)?

こういうピッチコンディションが悪い試合は、コンビネーションが使えない分、1vs1の要素が強くなるように思います。ある意味、サッカーの根幹部分を再確認できるというか、そんな印象はあります。そういう見方をすれば、こんな試合も楽しめますかね?

と言っても、この試合は楽しめる要素は少なかったと思いますが(苦笑)

上でも書きましたが、度外視中の度外視な負けだとは思います。ただ、見直すべきところは見直して欲しいなと思います。個人的に、鹿島の『したたかさ』と言うのをとても痛感したところです。

小菊セレッソを見ていて、真面目・愚直さというのをとても感じます。多分、小菊さんがそういう人なんだろうと。その人柄・性格が、そのままチームにも現れてるような印象でして。ここに、少しの遊びを入れても良いのではないかな?と。それが、鹿島の持つような『したたかさ』というものに繋がっていかないかな?と。そう思っています。

切り替えて、頑張ってほしいですね。

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