セレッソ 1-0 京都
2023.5.14 @サンガスタジアム by KYOCERA
勝ちは勝ち!!な勝利(笑)!
こんな勝ち方もある!という感じでしたかね。決して見栄えのする勝ち方ではないですが、こういう試合を拾っていくのも重要なこと。
そんな試合を振り返ります。
試合内容・雑感
●ヨニッチ・原川・陸の不在
この試合、スタメンが大きく変更されてました。ヨニッチ・原川・陸の不在。
陸の不在は、開幕からの数試合と同様、クルークスのスタメン復帰で・・・という事で理解は出来ました。ヨニッチは試合後のコメントからケガがあったと。原川は・・・?というような感じでしたね。
代わりに、クルークス以外では加藤と進藤のスタメン。4-4-2の原点回帰というところでした。
●クルークスの躍動
この試合に、久々にスタメン復帰したクルークス。めっちゃ躍動してましたね。
試合後の本人のコメントにある通り、『縦に行く』という手段を選択肢に入れてきたクルークス。坂元ばりの切り返しで、縦への突破を何度も見せてくれました。京都のDFは、クルークスをほぼ止められてなかったですよね。
非常に頼もしい選手が帰ってきた印象を強く持ちました。この試合で、相手チームからはクルークスに縦・右があると認識されたはず。そこを警戒すれば、今度は得意のカットインからの左足も活きてくる。
先々が楽しみになるプレーっぷりでしたよね。この試合の最大の収穫というところだったんではないですかね?
そして、またポジションを奪われる形になりそう?な陸。言うまでもないですが、また更なる奮起を見せてくれると思います。陸とクルークス、同じポジションでないのにポジション争いが起こるのが面白いところでもありますよね。
毎熊を軸とした右サイドのポジション争い、今後も楽しみです。
●上手く京都の良さを消した戦い方
この試合を評価するのに、ルヴァンでの敗戦が影響してたのは間違いないところなのかな?と思います。僕はルヴァンはハイライトしか見てないですが、京都のハイプレスに対して無理につなぐ選択を取ってやられたところがあったのかと。
その反省を生かして、
京都のハイプレスを避けるためのロングボール多用
という手段を取った感じだったのかな?と思います。
京都のハイプレスが効果を発揮するのは、ボールがセレッソ陣内にある時。であれば、
自陣にボールを出来るだけ置かないように意識してプレーする。
と言う単純明快な選択。先日のレビューで、木か?林か?森か?みたいな記事を書いたのですが、
ここで言う所の【森】のレベルで見たサッカーを実践したところかな?と思います。
言い換えれば、リーグ戦の順位的には下ですが、
京都に対して最大限のリスペクトを持った戦い方
をセレッソは選択したと言えるかも知れないですね。まあ、ルヴァンで2連敗中でしたしね。
●ロングボールの使い分け
そのロングボール狙いも、使い分けがあったと思いますね。
- DFラインの裏狙い
- ポケット狙い
- サイドチェンジ
これらの3つ位ですかね。この3つの使い分けることで、京都はどれが来るか?の判断は難しかったと思います。
メインのお題とするクルークスへのサイドチェンジや、進藤からレオセアラの裏抜け1発でもう少しで得点・・・みたいなシーンもありました。この辺、セレッソが選択したサッカーは、かなり効果はあったんではないかな?と思ってました。
そんな中で・・・?得点が生まれます(笑)笑うしかなかったですねw
●オウンゴールで先制
オウンゴールで先制!こんな得点もあるんすね(笑)
長い事サッカーを見続けてますが、4回も意図しないボールの跳ね返りでゴールを決まったのは見たことがなかったですね。草サッカーでもなかなかない(笑)30周年記念試合ですが、それにふさわしい見事なゴールだったかとw
試合後のコメントでもありますが、
ゴールに向かう姿勢が生んだゴール
ではありますよね。この時、2トップが外に流れてたので、中にいたのが奥埜とクルークス。その2人がきっちりとゴール前に詰めていたことも重要だと思います。
この2人がゴール前に詰めてなかったら、多分、加藤はキープを選択したはず。そうなると、このゴールは生まれてなかった。仕掛けてクロスを上げた加藤もそうですが、ゴール前に詰めたクルークスと奥埜も同様に称賛すべきですね。
チームも、このゴールを生まれた意義、その姿勢を忘れないで欲しいです。
●要所で締めたCB陣ですが・・・
ロングボールで京都のハイプレスを防いだセレッソですが、京都の高さには苦戦を強いられた印象でした。前半の山崎、後半のパトリックと。
それに加えて、豊川。敵にすると、やはり鬱陶しい(苦笑)スタートはウイングっぽい立ち位置なのかもしれないのですが、そこに捕らわれずにライン間に立たれるような動きは対応が難しかった印象でした。
それでも、今回、急造?の鳥海・進藤のCBコンビ。悪くなかったと思います。きっちりと、要所を締めてくれていた印象でした。それ故に、京都に押されてる印象があっても失点するようなイメージまでは湧かなかったかな?というところでした。
ただ、ここで書いた通り『悪くなかった』と言うのが個人的の印象。『良かった』という所には、至らなかったかな?と言うのも正直な所。それは、
京都の高さに対して、CBがもう少し跳ね返して欲しかったかな?
という所ですね。
試合後の、真司のコメントが以下の通り。
(後半は)ラインが下がっちゃったのと同時にプレスもなかなか外されるシーンが増えてきた。後半は相手に支配される時間がほとんどで苦しい時間だった。自分たちの時間をもっと作れるようにしないといけないし、これだけずっと引かされてしまうと、なかなか厳しい。
https://www.daily.co.jp/soccer/2023/05/14/0016351543.shtml
この試合、特に後半で引かされた要因は、
- CBが跳ね返せない
- MFがカバーの動きでプレスバックする(体の向きが後ろ)
- 全体が下がってしまう。
と言う流れだったと感じていて、きっかけが最初の
CBが跳ね返せなかった
という所にあったように思います。
チームの推進力は、MFの体の向きで決まると思っています。
自チームのMFが、前を向いているのか?後ろを向いているのか?
というところ。CBが跳ね返せずMFがプレスバックをするという事は、MFの体の向きは後ろ向きということ。つまり、前への推進力は生まれない。
そういう意味で、相手の放り込みに対して、CBは自チームのMFの頭を超える位にボールを跳ね返すのがベター(ベストはフリーな選手に繋げる)。この試合、この辺りがちょっと弱かった印象です。
相手の高さが強過ぎた・・・という見方もできるのですが、期待を込めて厳しめに書いてみました。前述の通り、要所は締めていたので、悪くはなかったとは思うのですけどね(苦笑)
そんな感じ、何とか?と言うべきか、危なげなく?と言うべきか判断は難しいですが、勝ちは勝ち。
見栄えのしない内容でしたが、個人的には後者:『危なげなく』という印象です。しっかりと相手の強みを消すことは出来ていたり、準備してきている所も見えた内容のある良い試合だったと思います。
そんな所で本題へ。CBからのサイドチェンジを取り上げ。
鳥海からのクルークスへのサイドチェンジが見事に決まったシーンがありましたが、そこを解説してみます。
サイドチェンジをフォローする毎熊の動き
取り上げるのは、(30:00~)のシーン。ハイライトでは納められてないので、興味のある方はDAZNのフルタイム版でチェックしてみてください。
このシーンの流れは以下のような感じです。
- 鳥海がボールを持って右を向く
- 毎熊がハーフスペースへ。
- クルークスが大外レーンへ。
- 鳥海のサイドチェンジがクルークスにドンピシャで通る
というような流れ。
ここで、重要なのが毎熊とクルークスの動きですかね。
鳥海のサイドチェンジに対して、毎熊・クルークスの2枚がレーンを入れ替える動き
をしているのが胆ですかね。
そして、相手マーカーの京都#44。この選手の挙動を見ていると、
どちらにマークに付くのか?
で混乱が生じてます。
図示するとこんな感じですね。
多分、対面の相手は右MFのクルークスだったのだと思います。ただ、クルークスについて行くと、ハーフスペース、小菊さんは『ポケット』と称してましたが、ポケットがスッポリと空いて来て、クルークスとレーンの入れ替えを行った毎熊がどフリーで侵入できる。
当然、そうなるのはまずいので、京都#44は毎熊のマークに付かざるを得なくなり、結果、
クルークスがどフリーでボールを受けられた!
というような流れになってました。見事な展開だったと思います。
綺麗な展開ですね。しっかりと良い立ち位置を取れていた毎熊・クルークス、数的優位な状態を作っているのを見逃さなかった鳥海の視野の広さと正確なキックと。3者3様の良さが出た一幕だったなと思います。
ただ、この方法論にはリスクもあります。
毎熊・クルークスと共に前に出る形になるので、裏のスペースはガラ空になってしまいます。当然、ボランチやCBがフォローしますが、どこかでミスが出てそのスペースにボールを落とされたりすると、毎熊・クルークスは完全に置き去りを食らいます。
そういう意味で、2人して前に上がるのは勇気が必要ですよね。ただ、それでも勇気を持って前に出るからこそ、得るものを得られる結果につながる。プレーを成立させた鳥海のパス、毎熊・クルークスの動きに称賛を送りたいですね。
小菊セレッソでは、こういったギミック、仕組みを多用しますよね。パスの出し手と受け手、それにプラスして3人目の動きがとても重要。3人目の選手がそういう動きが取れてる時、小菊セレッソが上手く回っている時というか、そんな印象はあります。為田が上手いですよね、そういう3人目の動き。
手段と言った『進藤』と『ロティーナ』の話。
今回紹介したのは、方法論の話。3人目の動きに注目してると、小菊セレッソがキチっと準備をしてきているなというのは良く分かります。
ただ、あくまで手段の話。上で紹介したのは、手段でしかないのですね。
これらの手段に対して、重要なのはその『目的』。
その手段を使うことで、何を得らえるのか?を理解すること
が重要かと思います。これ、何事にでも言えることですが、
手段を行うことが目的化してはいけない
というところかな?と。
手段の目的化・・・身近な所で例を挙げると、交通違反。本来、『危険な運転で事故を防ぐ』のが目的で、その目的を達成する手段が『交通違反の取り締まり』だったはずです。
ところが、警察内部で検挙数が目標になったりしてますよね。スピード違反を取り締まるのに、スピードが出そうな所で隠れて張ってたり(ネズミ捕り)。抑止力として、スピードが出そうな所では運転者に見える所に警察が立てば、本来の目的『危険な運転で事故を防ぐ』を達成し易いはずなんですけどね。
交通違反の検挙は、個人的に感じる『手段の目的化』の最たる例ですね(苦笑)このような感じで、
『手段の目的化』は意味をなさなくなる。
と思っています。今の警察のやり方で、事故が減るとは到底思えないです(苦笑)
サッカーでも、同じことだと思うのですね。戦術だけを踏襲する選手はただのYESマンでしかなくて、監督が『こうしろ!』と指示したとしてそれは出来ても、応用は効かない。戦術の目的を理解できる選手はその応用も効き、多くの場合は良い選手という評価になっていっていると思います。
ところで、何故、こんな話をしているか?
それは、この試合後のコメントで進藤が『手段』という言葉を口にしたからです。
ルヴァンカップでアウェイで負けた試合では、僕も出ていましたが、どんどん相手が前に来た。京都の得点パターンでもある、前で引っ掛けられての失点を繰り返した。もちろん、僕らはジンさん(ジンヒョン選手)からつないでボールを大事にしていくことも目指していますが、あくまでそれは手段でしかないので。今日の試合で勝点3を狙うために、今日はサイドでの高さやスペースで勝負する。そこは今日の試合に勝つために決断したやり方だと思います。毎試合、これだと厳しいですし、トレーニングの中では、ボールを大事につないでいくこともやっていかないといけません
https://www.cerezo.jp/matches/result/2023051402/
こういう発言、頼もしいですよね。『目的』を理解しているからこそ言えるコメントだと感じますし、そこから考えて課題も見えてる。
ジンヒョンからボールを大事に繋ぐのは、『目的』を達成する為の『手段』でしかなく、『手段』は臨機応変に変える決断も必要。ただ、『手段』は多く持って選択肢の幅は持っておきたい。進藤は、そういう話をしているのだと理解しています。
少し、ロティーナの言葉を思い出します。
2021年のシーズンオフ時に、ロティーナ・清水の密着ドキュメンタリーがDAZNで配信されたことがありました。2021年は清水が大型補強し、その上でロティーナが加入した年ですね。
ただ、本来、清水のサクセスストーリーを期待されての密着だったと思うのですが、清水の成績が伴わず。残留争いのドキュメンタリーみたいな配信になって、ちょっと残念な形になったのを覚えてる方も多いと思います。
その中での、ロティーナの言葉を引用します。(ロティーナ、流石、良いこと言うな~と思ったのでメモってました)この配信の中で、ロティーナ自身が監督としてやりたいこと等を語っています。
それが、
一番変えていきたいのは『選手の判断』。必ずしも、その瞬間の答えは1つではない。常に2つ3つの選択肢を持ち、最良の選択を選手自ら出来る事が大事なんだ
という事を言ってます。そして、清水で上手くいかなかった理由を問われて、
違いを生み出せる選手の長期離脱は痛かった。
ということも言っていました。
戦術の優れた監督として認識されるロティーナですが、この動画で、
ロティーナ自身は『選手の判断』の重要性を説いてる
んですね。
ロティーナの言う『違いを生み出す選手』というのは、ロティーナの言葉そのままに
最良の選択を自ら出来る選手
だと思ってます。そして、正しい選択ができる選手というのは、
その選択肢の『目的』を理解できている
ということだと思います。
前述の進藤の言と照らし合わせてみると、あくまで僕の解釈ですが、
進藤の言っている事は、ロティーナの言っている事そのまま
ですよね。なので、とても共感できます。
京都に勝つために(ボールを繋ぐ手段から)『 サイドでの高さやスペースで勝負する』と言う手段を変更する選択であり、結果、勝利に繋げた。また、更なる手段・選択肢を持つ為に『トレーニングの中では、ボールを大事につないでいくこともやっていかないといけません』という事を言っている。
多分、こういう理解をしている選手が後に大成していくのだと思います。それ故に、進藤に大きく期待してみたくなりました。
小菊さんは前述の通り、多くの手段を用意しているように感じてます。選手が小菊さんを支持するのであれば、後は選手が『目的を正しく理解すること』。そして、ロティーナの言葉を拝借して、
『 最良の選択を選手自ら出来る事 』が重要。
引き続き・・・なんですけど、個人的には選手の判断に注目していきたいなと思います。